結膜(白目の表面とまぶたの裏側を覆っている膜)に炎症が起きている状態を結膜炎と言います。なお結膜炎は、大きく感染性結膜疾患とアレルギー性結膜疾患に分類されます。感染性結膜炎は、さらにウイルス性と細菌性に分類されます。いずれの結膜炎であったとしても、眼瞼(まぶた)の腫れやむくみ、まぶたの結膜に充血や腫脹、眼球結膜には充血やむくみ、角膜と結膜の間にある組織(輪部)に腫脹といった症状がみられるようになります。
ウイルス性の場合は、アデノウイルスによる流行性角結膜炎(はやり目)、咽頭結膜熱(プール熱)をはじめ、エンテロウイルスやコクサッキーウイルスによる急性出血性結膜炎があります。夏の季節に発症しやすいのが、はやり目とプール熱で、はやり目はさらさらした目やにが両眼に、また涙が出る、まぶしく感じる、耳付近のリンパ節に腫れや痛みなどの症状がみられ、結膜の充血、眼瞼結膜に分泌物が溜まる、まぶたにむくみなどが現れます。プール熱の方は、小児が発症するケースが大半で、結膜炎自体の症状は軽度ですが、発熱や咽頭の痛み、頭痛や腹痛(下痢)などもみられます。また急性出血性結膜炎も結膜炎の症状自体は軽度(目の中の異物感、軽い流涙、眼球結膜下の出血)で、これら眼症状は1週間程度で治まりますが、その後(半年以上経過してから)に手足に麻痺が現れることもあります。
治療に関してですが、どのウイルスが原因だったとしても抗ウイルス薬というのはありません。ただ、細菌に感染しないようにする対策として抗菌薬の点眼療法を行います。
細菌性の場合は、黄色ブドウ球菌など一般細菌に感染することで発症する細菌性結膜炎、淋菌が原因の淋菌性結膜炎、クラミジア・トラコマティスに感染することで引き起こされるクラミジア性結膜炎というのがあります。いずれの細菌性結膜疾患にしても、まぶた(眼瞼)の腫れ、目の中の異物感、膿を伴う目やに(サラサラの場合もある)、結膜の充血などの症状がみられます。
細菌性結膜炎は、小児と高齢者に起こりやすいのが特徴で、乳幼児ではインフルエンザ菌、学童期のお子さんでは肺炎球菌によって引き起こされることが多いです(黄色ブドウ球菌が原因になることもあります)。一方、高齢者では黄色ブドウ球菌が原因菌となることが多く、この場合は慢性化しやすいことが多いので、他の眼疾患(眼瞼炎、角膜潰瘍 など)を併発しやすくもなります。また淋菌性結膜炎は、主に性行為によって淋菌に感染している患者さまの性器や精液などに触れ、そのまま目をこするなどする発症することが多く、この場合は性感染症として発症することが多いです(淋菌に感染している妊婦に新生児が産道を経て垂直感染する新生児膿漏眼もあります)。このほか、クラミジア性結膜炎も性交によって発症することが多いです。そのため淋菌性結膜炎と同じように性感染症として発症することが大半です。またクラミジアに感染している妊婦の胎児が産道において垂直感染し、発症することもあります(新生児結膜炎)。
治療に関してですが、細菌性結膜炎では、まず原因菌が何かを調べる必要があり、塗抹擦過検査、細菌培養の検査を行い、原因菌を判明させるようにします。確定後は結果に基づいた抗菌薬による治療を行っていきます。また、淋菌性結膜炎では、セフメノキシムの点眼薬やセフトリアキソンの点滴などを行っていきます。クラミジア性結膜炎の場合は、ニューキノロン系の点眼や眼軟膏のほか、抗菌薬(テトラサイクリン系、マクロライド系)の内服も必要になることもあります。アレルギー性結膜炎はこちら。
一般的にものもらいと言われる眼症状の正式な疾患名は麦粒腫(広義には霰粒腫も含む)です。
主な症状は、まぶた(まつ毛付近)の発赤や腫脹、そして痛みです。まぶたの内側に感染した場合は痛みが強く出ます。また腫れの中心部には膿点と呼ばれる白い点が現れることもあり、人にうつるということはありません。
ものもらいは、医師の視診によって診断をつけられることが大半です。治療が必要な場合は、主に抗菌薬の点眼(目薬)を行っていきます。症状が強く出ているのであれば、抗菌薬の内服薬も使用していきます。また、膿点がある、ものもらいが大きいという場合は、小さく切開して膿を排出することもあります。
植物から飛散される花粉が原因(アレルゲン)となって発症するアレルギー疾患のことを花粉症と言います。花粉症と聞くと春先に飛散するスギやヒノキがよく知られていますが、人によってはカモガヤ、ヨモギ、ブタクサなどがアレルゲンとなることもあります。そのため、季節は限定されることはなく、夏や秋に発症することもあります。
主な症状ですが、目や鼻の粘膜にアレルゲンである花粉が付着することで、目のかゆみ、充血、目の中の異物感、目やになどアレルギー性結膜炎の症状みられるほか、アレルギー性鼻炎の症状(くしゃみ、鼻水・鼻づまり 等)も併発するようになります。しかし、ハウスダストのようにアレルゲンが1年中存在するわけでなく、飛散時期に限定されることから季節性アレルギー性結膜炎とも呼ばれます。
問診や視診、患者さまの訴えで診断がつくこともありますが、アレルゲン(アレルギーとなる原因物質)を調べるための血液検査や皮膚試験(皮内テスト、スクラッチテスト)を行うこともあります。
原因となる花粉を突き止め、アレルゲンの除去や回避に努めるための環境を整えていきます。対症療法として、結膜炎の症状については、抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬等の内服薬をはじめ、眼症状が強ければ、抗ヒスタミン薬、ステロイド薬などの点眼薬を使用します。また鼻づまりなど鼻炎の症状が強く出ている場合、ステロイド系の鼻噴霧用の点鼻薬なども使用していきます。
そもそも人の身体には、ウイルスや細菌などの病原体(抗原)が体内へ侵入すると、それとくっついて排除しようとする物質(抗体)が作られるようになります。その後、体内に再び同じ抗原が入ってきたとしても以前作られた抗体が速やかに反応し、抗原を除去しようと活性化していきます。これを抗原抗体反応と言い、免疫システムと呼ばれます。
ただこの免疫システムが作られる際に何らかのミスが起きることがあります。例えば、必要以上に抗体が作られる、あるいは体に有害でないものや自らを攻撃する抗体までも作ってしまうといったことです。これらのミスによって、本来であれば体に有害でないもの(花粉、食物 など)までもがアレルゲン(アレルギー反応を引き起こす原因となる物質)となってしまい、それによって引き起こされる過剰反応がアレルギー反応です。
同反応によって引き起こされる眼症状としては、アレルギー性結膜炎があります。
アレルギー性結膜炎は、ハウスダストや花粉などのアレルゲン(アレルギーを引き起こす原因物質)によって生じる結膜炎です。
アレルギーは免疫システムの過剰な反応で、本来無害なものに対して体が反応し、異物として排除しようとすることで様々な症状が引き起こされます。
結膜炎の一般的な症状は、白目とまぶたの裏の充血、涙の増加、目やになどですが、アレルギー性結膜炎は、毎年同じ症状を繰り返したり、症状が長く続いたりします。
上記の症状を抑えるための対症療法(目の症状を和らげる)としては、主に副作用が少ないとされる抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬 など)を使用します。また症状が重度であれば、ステロイド(副腎皮質ホルモン)点眼薬を用います。ただ副作用として、眼圧の上昇や感染症に罹患しやすくなるリスクがあるので、使用の際は十分に注意を払う必要があります。
またアレルゲンが特定されているのであれば、それを回避するための対策を行います。具体的には、花粉症(季節性アレルギー性結膜炎)であれば、原因となる花粉の飛散時期はできるだけ外出を控えるほか、外出時は眼鏡やマスク、帽子をかぶるなどします。またコンタクトレンズの装用はしないようにします。
通年性アレルギー性結膜炎の患者さまの予防対策としては、室内を清潔(掃除機や空気清浄機をかける)にするほか、通気性をよくするなどします。また寝具を干す、洗濯をこまめに行うなどしてダニを繁殖させない対策も行うようにします。